「職場の飲み会に行くと気疲ればかりで、一人で反省してばかり」
「強い光や雑音が気になって集中できない」
と、感じたことはありませんか。
もしかしたら、それは「HSP」だからかもしれません。
”繊細さん”とも呼ばれる「HSP」は、生まれ持った気質で決して病気ではありません。けれども繊細で敏感すぎることに、生きづらさを感じる人も多くいます。
今回の記事では「HSP」とはなにか、「HSP」の人が自分らしいキャリアを描くためのヒントを紹介しますので、ぜひご活用下さい。
HSPってどんな人?
HSPは、Highly Sensitive Person(ハイリー・センシティブ・パーソン)の略で、生まれつき感受性が強く繊細な人のことを指します。1996年にアメリカの心理学者エレイン・N・アーロン氏博士によって提唱され、全人口の5人に1人はもっている気質だとも言われています。
HSPの4つの大きな特徴「DOES(ダズ)」とは?
D(Depth of Processing):深く処理をする
HSPの人は、HSPでない人よりも何事にも深く思考をめぐらせると言われています。
たとえば、HSPの人が上司から「いつも丁寧に仕事をしてくれて助かります」と言われたとします。HSPでない人は素直に喜ぶ場面ですが、HSPの人は「なんで急にそんなことを言うんだろう?」、「丁寧すぎて遅いってことかな?」とちょっとした一言に深く思考をめぐらせ、周りの人から「考えすぎ」と言われることがあります。
O(Overstimulation):過剰に刺激を受けやすい
2つ目の特徴は、外からの刺激を過剰に受けやすいことです。
満員電車などの人混みが苦手、暑さ・寒さに弱い、体調の変化や痛みに敏感、といった特徴があります。人一倍刺激を受けやすいため、外出しただけで疲れを感じやすく、一人の静かな時間を必要とする傾向があります。
E(Emotional response and empathy):感情の反応が強く、共感力が強い
周りの人の様々な感情を受け取り、共感力が強すぎることもHSPの大きな特徴です。
よく言われるのが「誰かが怒られているのを見ると、自分のことのように辛くなる」ということです。その反面、他人の喜びを自分のことのように嬉しく感じるといった良さもあります。
S(Sensitivity to Subtleties):些細な刺激を察知する
HSPは、強い音や光、におい、肌触りなど、五感で受ける些細な刺激を過剰に受け止めやすいと言われています。
「職場の空調音がいつもと違う」、「あの人の香水の匂いが変わった」、「衣類のチクチクが我慢できない」といった些細なことによく気がつくのが特徴です。その他にも、「今日は職場の雰囲気がピリピリしている気がする…」といった目に見えない変化にもよく気が付く傾向があります。
もしかして私もHSP?~自己診断してみよう
「もしかして私もHSP?」と思ったら、次のチェックリストで自己診断しましょう。
少しでも当てはまるなら「はい」、まったく当てはまらないなら「いいえ」を選びます。
1:周囲の微妙な変化にすぐ気づき、空気を敏感に読む
2:相手がどういう気分なのか、気になってしかたがない
3:人にどう思われているか、とても気になる
4:人と話しているとき、つい言葉の裏を考えてしまう
5:人見知りで、初めて知り合った人となかなか慣れない
6:ひとりでいるのが苦手で、誰か頼れる人がいてほしい
7:体を触られるのが苦手
8:人前で仕事をするのは集中できないので苦手
9:おなかがすくと集中できなくなる
10:間違いを指摘されると傷つき、なかなか立ち直れない
11:約束をすると、とても気になって落ち着かない
12:カフェインに敏感で、お茶やコーヒーを飲むと眠れない
13:においや味などの好みが強く、苦手な食べ物も多い
14:忘れ物やミスがないか、何度もチェックするほうだ
15:他人に対して、とても良心的だと思う
16:ちょっとしたことにも、すごくびっくりする
17:大きな音がとても苦手
18:明るい光や交通音、時計の針の音が気になって眠れないことが多い
19:動揺してしまうような状況をなるべく避けている
20:想像力が豊かで、空想にふけることが多いと思う
21:美術や音楽が大好きで、人より感動するほうだ
22:勘がいいほうだ
23:痛みに敏感
24:暴力的、残酷なシーンのある映画やテレビは見ない
25:短い時間に多くのことを同時にするのは苦手
26:生活に変化があると混乱し、落ち着くまで時間がかかる
27:人前で話すのが苦手でプレゼンテーションなどで緊張する
28:肩こりや頭痛をよく感じる
29:ストレスで胃が痛くなることがある
30:子どものころに、親や教師から「内気」「神経質」といわれていた
(引用)「敏感すぎる自分の処方箋」保坂隆著
「はい」が20項目以上の人は、HSPの可能性が高いと言われています。10~19項目でもその度合いが高ければ、HSPの可能性があります。
HSPが自分らしいキャリアを描くための3つの方法とは?
先ほどの自己診断でHSPの可能性が高かったとしても、落ち込む必要はありません。なぜなら、キャリアを描く上でHSPの気質がむしろ自分の強みになることも十分にあるからです。
ここからは、HSPの人が前向きに自分らしいキャリアを描くための3つの方法を紹介します。
1.まずはHSPを知り、受け入れよう
HSPは病気ではないので、治療して治るものではありません。HSPである自分に生きづらさを感じる人は、まずはHSPを知り、HSPである自分を受け入れることが第一歩です。
その上で「どんなことにつらいと感じるのか?」、「どうしたらそのつらさを解消できるのか?」をできるだけ洗い出しましょう。
一人で考えるのが難しい場合は、家族や親友など、悩みを否定せずに聞いてくれる人に相談するのもよいでしょう。もし、身近に相談できる人がいなければ、心理カウンセラーやキャリアコンサルタントなどの専門家に相談するのも一つの手です。自分を客観視することで、生きづらさの原因や、対処方法が見えてくるでしょう。
2.環境や行動を変えてうまく付き合おう
HSPは、自分の環境や行動を変えることで、生きづらさを軽くできます。
周りの人への共感力が高く、その場の雰囲気に影響されがちな人は、今日のランチは一人で静かに食べる、可能ならば在宅ワークをうまく利用するなど、「ここなら落ち着く」という環境をできるだけ確保しましょう。
外からの刺激を過剰に受け止めてしまう場合は、アイマスクや耳栓を使う、心地よい音楽を聴く、肌触りのよい寝具で眠る、お気に入りのアロマでリラックスするなど、できるだけ刺激を和らげる空間作りを心がけましょう。
3.HSPならではの強みを生かそう
一般的にHSPの人は、想像力が豊か、情報収集能力や危機管理能力が高い、人の気持ちに寄り添えるといった大きな強みを持ち合わせている傾向があります。
プログラマー、クリエイター、研究者、心理カウンセラーなどは、HSPの気質を強みにできる仕事だと言われています。自分の気質に合った仕事を選び、刺激を受けすぎない環境を整えることで、その豊かな感受性を強みに変え、ビジネスの場において活躍している人も大勢います。
まとめ
HSPは生きづらさを感じることがあるため短所だと思う人もいるかもしれませんが、HSPだからこそできること、気付けることがたくさんあります。
決して「繊細・敏感すぎて生きづらい人」ではありません。「良くも悪くも環境からの影響を受けやすい人」と考え、生まれ持った才能として強みに変えていきましょう。
■引用
「敏感すぎる自分の処方箋」保坂隆著