「いつかは子どもがほしいけれど、今は仕事が楽しい。転職も考えているし、今はキャリア形成を優先したい。とはいうものの、妊娠・出産にタイムリミットがあることも知っている。そういえば、卵子凍結って最近よく聞くようになったな。卵子凍結って実際どうなんだろう。卵子凍結しておけば安心なのかな」
このように考えている人はいませんか。
女性がキャリアを考える上で頭をよぎる、妊娠・出産というライフイベント。
卵子凍結という選択肢が身近になりつつある今、卵子凍結について気になっている方も多いのではないでしょうか。
こちらの記事では、前半で、卵子凍結のメリット・デメリットなど概要を紹介します。
さらに記事後半で、女性が直面する妊娠・出産・育児というライフイベントについて理解を深め、キャリア形成とライフイベントの両立について言及します。
お読みいただくことで卵子凍結のメリット・デメリットを理解し、今後のライフプランに取り入れていく可能性について考えるきっかけにしていただければ幸いです。
卵子凍結って実際どう?メリット・デメリット
卵子凍結とは
卵子凍結とは、女性の体内から卵子を取り出し、超低温の液体窒素の中で凍結保存すること。半永久的に保存可能であり、将来妊娠したいと思ったタイミングで解凍し、顕微授精することで妊娠にのぞめます。
受精前の段階の卵子を凍結させるものであり、正確には「未受精卵子凍結」といいます。主に未婚女性が対象です。
卵子凍結には、医学的適用によるものと社会的適用によるものがあります。
- 医学的適用…癌などに罹患した女性が、抗がん剤の投与や放射線治療により将来子どもを産めなくなることを回避するために、未受精卵を保存すること。卵子凍結は、もともとはこの目的から始まりました。国も必要性を認め、公費の助成対象です
- 社会的適用…医学的な理由がない健康な女性が、将来の妊娠・出産を望む場合に備えて未受精卵を凍結すること。近年ニーズが増加しており、自治体や民間企業の一部にも費用助成や支援の動きが見られます
また、卵子凍結と混合されやすいものに、不妊治療の一貫で行われる「受精卵凍結」があります。これは、体外受精により受精した卵子を凍結したものです。
受精卵のほうが未受精卵より妊娠率が高まるため、既婚者は基本的にこちらを選択します。
メリット
妊娠率が高い若い卵子を残せる
加齢にともなって卵子の質は下がり、妊娠率の低下、流産率の上昇につながります。卵子凍結することで、採卵した年齢の卵子を使って妊娠に挑戦できます。
卵子が無くなる前に確保できる
加齢にともなって卵子の数も減少します。卵子の数は胎内にいるときが最も多く、その後、月経の度に卵子の数が減少していきます。卵子凍結することで、卵子が無くなる前に確保しておけるため、将来妊娠したいときに使えます。
デメリット
身体的・精神的負担が大きい
排卵誘発剤を使用する副作用で、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)が起きることがあります。腹部膨張感や倦怠感、重症の場合は腎不全や血栓症を引き起こすことも。
また、身体的負担だけでなく、採卵のストレスやプレッシャーを感じるなど精神的負担も大きいものです。
経済的負担が大きい
卵子凍結にかかる費用は保険適用外のため、高額です。病院によって違いますが、25~50万円程度になります。卵子凍結を行った後も、凍結卵子保管のための管理費が毎年数万円程度必要になります。
時間的・労力的負担が大きい
卵子凍結のためには、誘発注射、服薬などに加え、少なくても月に3~4回の通院、状況によってはもっとたくさんの通院回数が必要です。
通院は卵胞の生育具合によって決まるため、急な通院や連日の通院を求められることがあります。一回の通院に数時間かかることも多く、時間的・労力的負担が大きくなります。
仕事をしている女性は、仕事の予定が入れづらくなったり、通院のため仕事を度々抜けることに周囲への引け目を感じるなど、仕事との両立に不都合を感じがちです。
高齢妊娠・出産のリスクが高まる
卵子が若くても、高齢出産する場合の母体のリスクは軽減できません。妊娠中の病気の発症、流産・早産など、母子どちらにもリスクが高まります。
将来妊娠できる保証はない
卵子凍結の妊娠率・出生率は低く、卵子凍結は将来妊娠できる保証にはなりません。
日本産科婦人科学会によると、凍結卵子が子宮に着床する確率は17~41%、出生率はさらに低く、ひとつの未受精卵からの子どもの出生率は4.5~12.0%と発表されています。
卵子凍結をしても、将来の妊娠は非常に不確実なものなのです。
卵子凍結が適しているケース・よく考えるべきケース
卵子凍結のメリット・デメリットを押さえた上で、適しているケースとそうでないケースを整理して説明します。
適しているケース
医療的な理由から将来の妊娠が不確かな人
癌などの病気の治療に際し、将来にむけて妊娠能力を残しておきたい場合は、卵子凍結が適しています。
今は妊娠・出産に臨める状況にない人
仕事や家庭、身体の事情など取り巻く環境により今は妊娠・出産にのぞめる状況にない人も、卵子凍結は適しているといえるでしょう。
ただし、卵子凍結のメリットだけでなくデメリットも十分理解した上で選択する必要はあります。
具体的には、転勤や海外勤務、家族の看護や介護、身体のリハビリ中などの理由で卵子凍結を選ぶ人がいます。
よく考えるべきケース
十分な理解をせず先延ばしを考える人
デメリットやリスクを十分に理解せず単に妊娠・出産を先延ばしにする考えの人には、卵子凍結は適しません。
卵子凍結はあらゆる負担が大きいものの、妊娠・出生率がさほど高くない現実もあります。卵子凍結したから将来安泰というわけではないのです。
女性がキャリア形成とライフイベントを両立するために
卵子凍結について説明してきました。ここからはさらにふみこみ、女性のキャリア形成とライフイベントについて考えていきましょう。
妊娠のあとのライフイベントまでイメージしてみよう
キャリアも積んでいきたいし子どもも希望するという女性は、20代~30代のうちから、ライフプランを十分にイメージしていきましょう。
妊娠はゴールではありません。
妊娠のあとには出産・育児と大きなライフイベントが続きます。育児は約20年続くと考えましょう。
高齢になってからの妊娠・出産・育児は、自身の体力低下や更年期症状、親の介護・看護などさまざまな課題と時期が重なる可能性が高くなります。
若い頃の何倍も負荷がかかる可能性があります。
デメリットも含めて、妊娠・出産を先延ばしにした場合を十分にイメージした上で、卵子凍結を検討する視点が必要です。
妊娠・出産・育児が必ずしもキャリア形成を妨げるわけではない
とはいうものの、キャリアを積みたい20代~30代にキャリアを中断し、妊娠・出産・育児を選択することには大きな不安や怖さがありますよね。
しかし、実際には、妊娠・出産・育児の経験がキャリア形成にプラスに働くことも多いのです。
妊娠・出産・育児を経てスキルアップし、その後のキャリア形成に成功した先輩方の声を紹介します。
- 仕事に割ける時間や労力が限られるようになり、タイムマネジメント・タスクマネジメントが上手になった
- 思い通りにならない子どもと日々接することで、コミュニケーション術や指導能力があがった
- ママ友やPTAで多様な人とやりとりする経験を経て、人との付き合い方や交渉のスキルが高まった
- 自分の力ではどうにもならないことが増えて、忍耐力や柔軟性が身についた
妊娠・出産・育児の経験を通して人間的にスキルアップでき、仕事に活かせるようになったという先輩はたくさんいます。
まとめ
卵子凍結のメリット・デメリットは次の通りでした。
メリット
- 妊娠率が高い若い卵子を残せる
- 卵子が無くなる前に確保できる
デメリット
- 身体的・精神的負担が大きい
- 経済的負担が大きい
- 時間的・労力的負担が大きい
- 高齢妊娠・出産のリスクが高まる
- 将来妊娠できる保証はない
卵子凍結のこれらのメリット・デメリットについて十分に理解した上で、ライフプランに取り入れるかをしっかり考えてみましょう。
また、卵子凍結に限らず、自分の価値観や思いを深掘りし自分が描きたいライフプランを今からしっかりと考えることが大切です。
自己理解と、理想のライフプランへの準備を重ね、生き生きとキャリア形成できる女性が増えることを祈っています。
参考: