辞めた会社に戻るってあり?〜増えつつあるカムバック入社のメリット・デメリット〜

一度辞めた会社に戻る、いわゆる「カムバック入社」が増えています。

「他の会社も経験したが、自分には前の会社が合っている」

「起業したが、経済的な安定を求めて正社員に戻りたい」

「育児や介護などプライベートな事情で辞めたが、落ち着いたので辞めた会社に戻りたい」

ひと昔前であれば、会社を辞めることは後戻りのできない選択だと考えられていました。けれども働き方が多様化し、「辞めた会社に戻る」という選択肢が広がりつつあります。

今回はカムバック入社について説明し、メリット・デメリットを紹介します。

転職活動中の方はもちろん、まだ具体的には考えていない方も、そういった選択肢があることをぜひ知ってもらえれば嬉しいです。

カムバック入社とは?

転職・起業・育児・介護など様々な事情により、一度辞めた会社に再度入社することを、「カムバック入社」と呼んでいます。

カムバック入社は、主に次の2つのパターンがあります。

・別の会社に転職、もしくは起業してから戻る。

・育児や介護などを理由に退職し、転職はせずに戻る。

企業の経営者・人事を対象にしたアンケート調査では、約7割の企業が「カムバック採用(別名:アルムナイ採用)」を実施しているという結果もあり、過去に在籍していた優秀な人材を積極的に受け入れる企業が増えています。

国内でも、パナソニックグループ、江崎グリコ、良品計画をはじめとする多くの大手企業でカムバック採用に取り組んでいます。

今後20年、日本では労働人口が大きく減り、慢性的な人材不足になると言われていることからも、カムバック採用は大きな選択肢の一つになるかもしれません。

カムバック入社のメリット

入社後のミスマッチが少ない

カムバック入社では、一度辞めた会社の長所や短所をある程度理解した上で戻ってくるため、入社後のミスマッチが少ないことが一般的です。

通常の転職では「入社したら会社のイメージが違った」、「仕事内容が面接で聞いていたものではなかった」といったミスマッチが起こりがちです。

カムバック入社では、入社の時点でお互いへの理解があり、信頼関係が築けていることが多いため、「こんなはずではなかった」というミスマッチが少ないことが大きなメリットです。

即戦力として活躍しやすい

カムバック入社では、よほど短期間で辞めた場合をのぞき、社風や仕事の進め方を理解しているため、研修に多くの時間をかけることもなく、即戦力として活躍しやすいことが大きな特徴です。

働いているメンバーも顔見知りが多いため、スムーズに人間関係を築けることも大きなメリットです。

転職活動の労力が減らせる

カムバック入社では、実績・スキル・人柄をあらかじめ把握していることもあり、面接の回数が少なかったり、筆記試験が免除されたりと、選考が短いことが多いようです。

通常の転職活動では、入念に企業研究を行ったり、履歴書を作ったりすることに多くの時間がかかるものですが、在職時の実績・スキル・人柄から判断されることも多いため、転職活動の労力を大幅に減らせます。

他社での経験を活かせる

カムバック入社では、他社で身につけたノウハウや経験を、転職後に活かせることも大きなメリットです。

他社で働いた経験をもとに、第三者目線で一度辞めた会社を見られるため、強みや弱みを積極的にフィードバックできます。

業務の効率化やIT化の提案など、新しい文化を取り入れるきっかけを作ることも期待されるかもしれません。

育児・介護などで退職した場合、ライフイベントに合わせた働き方ができることも

在職時に不満やトラブルがあったわけではなく、育児・介護・配偶者の転勤などのやむを得ない事情で退職した方のカムバック入社も増えています。

ライフイベントによって一旦会社から離れたとしても、落ち着いたタイミングで再入社できることは大きなメリットです。

育児・介護・配偶者の転勤などで退職を余儀なくされるケースは、誰にでも起こり得ることです。カムバック制度のある会社で働くことで、「制度があるから安心して働ける」と、仕事とライフイベントの両立への不安を、事前に解消する効果もあります。

カムバック入社のデメリット

前回の理由が解消されていないかもしれない

一度会社を辞めたということは、それなりの理由があったということなので、その退職理由が解消されない場合、当然同じような理由でまた辞めたくなるかもしれません。

人間関係だったのか、待遇だったのか、働き方だったのか、「なぜその会社を辞めたのか」を事前に振り返り、面談等で前回の退職理由が解消されているのか確認しましょう。一度辞めた会社に、再度入社することはそれなりの覚悟が必要です。

既存社員から快く思われないかもしれない

一度辞めた社員が好待遇でカムバック入社した場合、働き続けている社員から快く思われないケースもあるかもしれません。戻ることができたとしても、必ずしも働きやすい環境とは限らないというデメリットも考えられます。

どんな環境でも周囲から100%支持されることは難しいことです。あまり深く考えすぎず、「結果を出して恩返ししよう」という気持ちで仕事に取り組むとよいでしょう。

役職、待遇、会社のルールが変わっているかもしれない

カムバック入社では、必ずしも役職・待遇・会社のルールが以前と同じとは限りません。

以前働いていた会社であっても、退職後に社内事情が大きく変わることもあり、再入社してみたら「こんなはずではなかった」とギャップを感じるかもしれません。

再入社してから「給与が下がった」、「以前の部下が上司になった」、「人事制度が大きく変わった」といった変化に不満を感じることがないよう、面談ではそういった点についても綿密にすり合わせをしましょう。

まとめ

今では多くの企業がカムバック制度を取り入れ、「退職する=縁が切れる」という考えは過去の話になりつつあります。人材不足が叫ばれる中、カムバック制度を活用する企業はこれからも増えていくのではないでしょうか。

退職した当時は「自分に合わない」と思ったとしても、時間が経てば条件が一致することは誰にでも起こり得ることです。「辞めた会社に戻る」という選択肢があることは、今後キャリアを築く上で大きな影響を与えるかもしれません。

■参考

・【再雇用(アルムナイ採用)に関するアンケート調査】株式会社プロフェッショナルバンク調査

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000017.000005100.html

・パナソニックグループ

https://recruit.jpn.panasonic.com/career/better_career/

・江崎グリコ

https://hrmos.co/pages/glico/jobs/1672828998655803413

・良品計画

https://careers.muji.com/jp/comeback/