変化に強いキャリアを作り出す!「レジリエンス」の高め方とは?

「大事なプレゼンでありえないミスをしてしまった…」

「いつも手を抜いている同僚の方が先に昇進した…」

「やってもやっても仕事が終わらない…」

キャリアを積み重ねていく中で、誰もが一度は経験する「心が折れそうな瞬間」。

けれども、同じ状況でも「すぐに立ち直る人」と「なかなか立ち直れない人」がいるのはなぜでしょうか?

今回は、すぐに立ち直るための力、「レジリエンス」について説明します。

レジリエンスを高めると、キャリアのみならず、プライベート上の困難からもしなやかに立ち直れます。ぜひ様々なシーンでお役立てください。

レジリエンスとは?

レジリエンスとは「回復力」、「弾力」、「復元力」を意味する言葉です。

もう少し簡単に言うと、強いストレスを感じたり、落ち込んだりした時に、しなやかに立ち直るための「打たれ強さ」です。中でも、キャリアに関わるレジリエンスは、「キャリアレジリエンス」と呼ばれ、近年ビジネスシーンにおいて注目されています。

レジリエンスはポジティブな性格の人だけが持つと思われがちですが、元々私たちにはストレスを感じている状態から、立ち直ろうとする力が備わっています。

けれども、ストレスを感じやすい性格だったり、困難なことが重なったり、体調不良だったりすると、レジリエンスの力が弱まることがあります。

レジリエンスが弱まると、ストレスや困難から立ち直るのに時間がかかり、メンタルヘルスの低下を招く一因になります。

レジリエンスが高い人はどんな人?

逆境に強い人のことを「レジリエンスが高い人」、「レジリエントな人」と呼ぶこともあります。

レジリエンスが高い人には、次に挙げる6つの特徴があります。

– 考え方が柔軟

– 向上心がある

– 楽観的である

– 感情をコントロールして気持ちの切り替えができる

– リスクを恐れずに挑戦できる

– 周囲と良い関係を築ける

詳細は後述しますが、レジリエンスは自分で意識して鍛えることで高められます。

レジリエンスはなぜ必要?

VUCAの時代に対応するため

まず第一に、急激なビジネス環境の変化に柔軟に対応するためという理由が挙げられます。

近年は、「VUCAの時代」とも呼ばれ、自然環境の変化、ITの発展、グローバル化、世界的な感染症の流行や戦争など、将来が不透明で変化の激しいビジネス環境だと言われています。

このような状況の中、様々な変化や困難に直面しても、しなやかに立ち直るレジリエンスが求められる傾向が高まっています。

労働者のメンタルヘルス問題が深刻化しているため

長時間労働や仕事のプレッシャーなど、様々な原因により、労働者のメンタルヘルス問題が深刻化していることも理由に挙げられます。

厚生労働省の調査(「令和3年労働安全衛生調査(実態調査)の概況」)では、仕事や職業生活に関する強いストレスを感じている人の割合が53.3%に上り、半数以上の人が仕事へのストレスを抱えていることが分かります。

レジリエンスが高い人は、仕事上のストレスや困難があっても早く立ち直ることができ、メンタルに不調をきたすことなく仕事を進められます。

労働力不足が深刻化しているため

少子高齢化の日本において、労働力不足が深刻化したことも、レジリエンスに注目が集まる背景として挙げられます。

企業は、限られた人員でこれまでと同等の成果を出すために、従業員により長く、より高いパフォーマンスで働き続けてもらいたいと考えています。そのため、ストレスや困難に直面しても、しなやかに立ち直るレジリエンスの高い人が求められるようになりました。

レジリエンスを高めるためにやっておきたい3つのこと 

1.ABCDE理論を身に付け、思考のパターンを変えよう

少し難しい話になりますが、まずはABCDE理論を身につけ、思考のパターンを少しずつ変えていきましょう。

ABCDE理論とは、臨床心理の権威であるアルバート・エリス博士が提唱した認知療法の一つです。ABCDEは、それぞれ次のような意味を指します。

A:Activating event(出来事)

B:Belief(受け止め方)

C:Consequence(結果としての感情)

D:Dispute(自問自答)

E:Effect(Dによる効果)

ここで、上司に面倒な仕事を頼まれる部下の気持ちを一例として、ABCDE理論を用いて考えてみましょう。


A:(出来事)

上司から面倒な仕事を頼まれる。

B:(受け止め方)

上司はいつも自分に面倒な仕事ばかり押し付けてくる。他の人にはそこまで頼んでいない気がする。

C:(結果としての感情)

自分ばかり面倒な仕事を頼まれると、上司から嫌われている気がして強いストレスを感じる。

D:(自問自答)

面倒な仕事を頼まれているのは、本当に自分ばかりなのだろうか。実は他の人も同じように頼まれてはいないだろうか。もしかしたら自分に期待してくれているのかもしれない。

E:(Dによる効果)

上司は面倒な仕事も頼んでくるが、プロジェクトの中枢となるような大きな仕事も自分に頼んでくる。成長できるよい機会だと思って、頼まれた仕事を確実にこなそう。


上司から面倒な仕事を頼まれると、どうしてもネガティブな気持ちで心がいっぱいになってしまう人もいるでしょう。

そのような時には、目の前の事実をできるだけ客観的に見つめ直し、必要以上にネガティブになっていないか、自分自身の陥りやすい思考パターンを変えられないか、ということを意識しましょう。

けれども、思考パターンを変えることは簡単ではありません。感情をコントロールするコツを見つけたり、成功体験を積み重ね、自信をつけることも大切です。

2.小さな成功体験を積み重ね、自己効力感を高めよう

小さな成功体験を積み重ねることも、レジリエンスを高める重要な方法です。

小さな成功体験を積み重ねることで、「自分はできる!」と自信が生まれ自己効力感が高まります。自己効力感が高くなると、それを「自分の強み」としてとらえられ、それを生かして「何かにチャレンジしよう」という前向きな気持ちへ繋がります。

仕事上の成功体験はもちろん、仕事に関係のないことでも構いません。

– 会議中の自分の発言が上司に褒められた。

– 集中して仕事に取り組み、定時に仕事を終えられた。

– 朝いつもより少し早く起きられた。

「こんなことができた!」と前向きな気持ちを持つことが重要です。日々の生活の中で小さな成功体験を意識的に探しましょう。

3.周囲からのサポートを受けよう

逆境に負けそうな時、周囲に相談しサポートを受けることも、レジリエンスを高める有効な方法です。

思考のパターンをうまく変えられなかったり、成功体験に自信が持てなかったりする場合、周囲に相談することで気持ちの整理がつき、新しい視点で物事を見つめ直せます。

レジリエンスは一人で高めるには限界があります。レジリエンスを高めるには、自分の心と深く向かい合う必要があるため、本音を話せて信頼できる人にサポートをお願いするとよいでしょう。

まとめ

仕事をしていく上で、ストレスや困難と上手に付き合うことはとても重要です。

レジリエンスを高めれば、精神状態が安定しやすくなるため、自分の力を存分に発揮できるようになります。レジリエンスは日々の意識と行動で鍛えることが出来るスキルなので、ぜひ今回の記事をお役立ていただけると嬉しいです。

■参考

厚生労働省 令和3年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況