リカレント教育の必要性とは?目的やメリットをわかりやすく解説

リカレント教育の目的と必要性

学生の頃、もっと勉強していればよかったな…

社会人になり、さまざまな壁にぶつかると、このような後悔をする方も少なくないでしょう。

しかし、ご安心ください。

今はリカレント教育という形で、社会人も学び直しをして新たな知識を得ることができます。

会社員だけでなく、病気や出産・育児でやむを得ず仕事を離れ、社会復帰を目指す人もリカレント教育を受けることができるのです。

今回は、近年注目されている社会人の学び直し「リカレント教育」の必要性や目的、メリットを解説します。

混合されやすい生涯学習との違いについてもまとめましたのでぜひ最後までご覧ください。

リカレント教育とは?

学び直しをするための教科書とノート

リカレント教育とは、社会人が必要なタイミングで再び教育を受け、就労することを繰り返す教育制度です。

別名「学び直し教育」、「社会人の学び直し」とも呼ばれています。

リカレント教育の歴史はまだ浅く、1960年代にスウェーデンの経済学者が提唱したのが始まりです。

その後、1970年に開催された「経済協力開発機構(OECD)」で取り上げられたことから、欧米を中心に広がっていきました。

近年、日本でも急速に進む技術革新や市場の変化、終身雇用制度の崩壊により、リカレント教育が注目されています。

リカレント教育の学習内容

リカレント教育の学習内容はさまざまですが、主に仕事と直結した内容を学び直します。

日本の大学や団体で開講されている、リカレント教育の主な分野は次の通りです。

✔︎ Check

・介護・福祉
・地域発展(主に観光・農業)
・MAB・社会労務士
・ビジネス科目
・語学
・IT関連

スキルアップやキャリアチェンジのための資格取得対策や専門的な知識を得るための教育、将来の幹部候補になるための知識を身に付けるビジネススキルなどを学べます。

リカレント教育の対象者

リカレント教育の対象者は学校教育を終えた「社会人」です。

就労中の人だけでなく、就活中や休職中の人も含まれます。

年齢制限もないため、「学び直したい」という意志と家族や勤務先の同意など学習環境が整えば、必要なタイミングでいつでもリカレント教育を受けられます。

出産・育児または介護などで離職した人や定年退職した人が、リカレント教育を受けてスキルアップし、再就職を目指すケースも少なくありません。

欧米と日本のリカレント教育はどう違う?

欧米と日本では、リカレント教育のスタイルが違います。

リカレント教育のスタイル
欧米就労と教育をフルタイムで繰り返すスタイル。
就業中は仕事を休むまたは辞める。
日本就業中に教育を受けるスタイル。
夜間や休日に開講されている授業を受ける。

欧米では、就業期間と教育期間をはっきりと分けるスタイルで、教育期間中は仕事を辞めるもしくは休職します。

また教育期間も年単位で、就労し始めるまで長い期間を要します。

一方日本では、未だに終身雇用の習慣が根強く残っています。

そのため、スキルアップのため休職や退職をしてしまうと復職または再就職したときに、同じポジションに戻るのが難しくなるのが現状です。

よって、日本では就労しながら学び直すスタイルが浸透しています。

仕事で収入を得ながら学び直すスタイルは、収入ゼロのリスク回避になります。

しかし平日は就業し、貴重な休日は教育に専念するよう推進する日本は、なかなかツライものがありますよね。

日本でも欧米のリカレント教育スタイルが浸透することを願うばかりです。

リカレント教育と生涯学習の違い

リカレント教育は年齢制限がないことから、しばし生涯学習と混同されがちです。

しかし、リカレント教育と生涯学習は目的と内容が違います。

種類目的内容
リカレント教育仕事に活かす
より豊かな人生を送る
生涯教育働くことを前提にした知識や
スキルを得る
仕事に直結しないものも含む

リカレント教育は、ビジネススキルや専門的な資格取得など仕事に活かせる知識を得るために行います。

一方生涯学習は、趣味やスポーツ・ボランティアなど、仕事に直結しないものも含まれているのです。

このことから、生涯学習の1つにリカレント教育があると言えます。

リカレント教育の必要性が高まっている理由

スキルのアップデートを行う女性

社会人が学び直しをするリカレント教育の必要性が高まっているのには、3つの理由があります。

✔︎Check

・技術の革新や市場の急速な変化に対応するため
・終身雇用制度の終わりとジョブ型雇用の拡大
・労働期間の長期化

それぞれ詳しくみていきましょう。

技術の革新や市場の急速な変化に対応するため

近年、「AI」や「Iot」などの登場により技術革新が進み、それに伴い市場も変化しています。

このことから、多くの企業が次のような課題を抱えるようになりました。

・従来の仕事の仕方やスキルでは通用しない
・全く違ったスキルを求められる

これらの課題を解決するためには、「従来の知識・スキルのアップデート」「新たな知識・スキルの習得」が欠かせません。

このような企業課題を解決するための知識やスキルを身に付ける方法の1つとして、社会人が学び直す「リカレント教育」が注目されています。

終身雇用制度の終わりとジョブ型雇用の拡大

これまで日本では、生涯にわたって1つの会社に勤め続ける「終身雇用制度」が当たり前でした。

しかし近年では、終身雇用制度は崩れ始め、キャリアアップやキャリアチェンジのために転職活動をする人が増えてきています。

それに伴い、ジョブ型雇用が拡大しています。

ジョブ型雇用とは、企業が業務の内容を明確に定義し、その職務に合った人と雇用契約を結ぶことです。

終身雇用制度のように1つの会社でさまざまな業務を行う働き方から、自分に適した職種(ジョブ)のキャリアアップやキャリアチェンジのため、さまざまな会社に転職する働き方に変わりつつあるのです。

しかし、さまざまな会社に転職するジョブ型雇用には、1社あたりの勤続年数が短く、企業の社内教育だけでは業務に必要な知識やスキルが習得できないという課題があります。

その解決策として、自ら必要な知識やスキルを学ぶ「リカレント教育」が注目されています。

労働期間の長期化

厚生労働省が発表した令和2年の簡易生命表によると男女の平均寿命は次のようになっています。

・男性…81.64歳
・女性…87.74歳

このように日本では長寿化が進んでおり定年退職を60歳とすると、その後、約20年間の隠居生活が待っています。

しかし、少子化が進み労働人口の減少が予想されることから、今後は男女問わず若者から高齢者まで働くことが求められるでしょう。

その1つとして、高年齢者雇用安定法の法改正により2025年4月から定年制を採用している全ての企業において、65歳定年制が義務となります。

また現在、国民年金・厚生年金は本来65歳での受取りですが、労働人口の減少から近い将来、支給開始年齢のさらなる引き上げや支給額の減額の可能性もあります。

長く働き安定した収入を得るため、その都度必要なタイミングで「教育」を受け、年齢や能力に合った「就労」を繰り返す、リカレント教育が注目されているのです。

リカレント教育をする3つのメリット

リカレント教育で成功する人

リカレント教育の必要性はわかるけど、仕事で疲れた身体にムチを打ってまで学習するメリットはある?

仕事に満身創痍している方こそ、このように考えると思います。

もちろん、身体が一番なので無理してリカレント教育を受ける必要はありません。

しかし、就業しながら空いた時間でリカレント教育を受けると次のようなメリットがあります。

✔︎Check

・専門性の高い職業に就きやすくなる
・年収アップ
・非就業者の就業率アップ

今回は、内閣府が公表している「平成30年度 年次経済財政報告」から1つずつ詳しく見ていきましょう。

専門性の高い職業に就きやすくなる

社会人が今の仕事をしながら、リカレント教育により学び直しを行うと、専門性の高い職業への就労率が1年後には、2.8%。2年後には3.7%ポイント増加するという結果が出ています。

出典:第2章 第2節 人生100年時代の人材育成 – 内閣府

ここでいう専門性の高い職業とは次の通りです。

・管理的職種
・情報処理技術者
・専門的・技術的職業従事者
・保安職業従事者

これらの職業に就けると、年収・キャリアアップが臨めるので、転職活動が有利になることが期待できます。

年収アップ

リカレント教育を行った人と行わなった人の年収を比べてみると、1年後はそれほどの差はありませんが、2年後には約10万円、3年後には約16万円もの差が出ています。

出典:第2章 第2節 人生100年時代の人材育成 – 内閣府

このことから、リカレント教育を受けてすぐには、年収アップの効果は期待できませんが、時間が経つにつれて徐々に効果が現れてくることがわかります。

非就業者の就業率アップ

就職活動中または休職中の非就業者がリカレント教育で学び直しを行うと、就職できる確率が10~14%ポイント増加します。

さきほどの年収と異なり、就業率のアップはリカレント教育後すぐに効果が期待できる結果となりました。

出典:第2章 第2節 人生100年時代の人材育成 – 内閣府

このことから、就職活動でなかなか職が見つからない社会人は、リカレント教育をすることで、就職できる確率を高められると言えます。

まとめ

今後も技術革新は進み、それに伴い市場も変化することが予想されます。

そうなると業務を進める中で、学生時代や社内研修で得た知識、社会人経験で得たスキルで対応できない場面が増えるかもしれません。

このような場面に柔軟に対応するには、社会人の学び直し「リカレント教育」が欠かせません。

仕事をしながらリカレント教育を受けるのは、負担に感じるかもしれませんが、その分スキルアップや年収アップなどのメリットもあります。

また転職やキャリアチェンジを考えるときに、専門知識を身に付けることは、内定率アップにも繋がります。

長く働き続けるためには、知識やスキルのアップデートが欠かせません。

業務の壁にぶつかっている方は、リカレント教育で知識という武器を身に付け、解決の糸口を探ってみることをおすすめします。