キャリアと妊活の両立に向けて~最大の敵、ストレスとどう付き合うのが正解?

皆さんはこんなデータをご存じでしょうか?
・夫婦5.5組に1組が不妊治療経験者
・不妊治療中の3人に1人が「仕事をやめた」、「雇用形態を変えた」、「妊活をやめた」

不妊に悩んでいたり治療をしている人が、ごく身近にいることに驚いた方も多いのではないでしょうか。これから子どもを望む人にとっては、決して他人事ではありませんね。
また、キャリアと妊活の両立には想像以上に高いハードルがあることも伺えます。

この記事では、「キャリアと妊活の両立にはどんなストレスがあるのか」、「ストレスとどう付き合っていったらよいのか」を紹介します。「妊活は大変だ」というイメージはあるものの、まだ結婚も出産も先だと思っている方にも、ぜひ一度読んでいただければと思います。

働く女性の妊活ストレスとは?

働く女性の妊活で、ストレスに感じることを4つピックアップしました。まずは、今の職場で、働きながら妊活をする自分を想像しながらお読みください。

通院が多い、治療がつらい

働く女性の妊活で、最も大変だといっても過言ではないのが、「治療や通院のスケジュールがとてもハード」ということです。1回の月経周期で、女性は4~10日くらい通院が必要です。不妊治療専門の病院は毎日混んでいますので、1回の通院時間は1~3時間くらいかかることが一般的です。それに加え、体調に合わせた治療をするため「明日、また通院して下さい」と言われることも多く、調整が難しい仕事のスケジュールを入れることができません。職場に治療をしていることを伝えていないと、急に休みを取ることで職場の人に迷惑をかけていないか自己嫌悪に陥りやすく、働く女性の大きなストレスになります。

また、体外受精などの高度な治療では、卵子をたくさん作るために連日注射をすることがあります。注射の副作用によっては、吐き気、だるさ、お腹の張りなどを感じ、仕事どころではないと感じることも多いようです。

なかなか妊娠できない・周囲が妊娠することへの焦り

働く女性の妊活ストレス2つ目は、「決して自分のペースでは進まず、努力すれば必ず叶うわけではない」ということです。「大きな仕事が終わったから今が妊活のチャンスなのに……」や「食事に気をつけてお酒も我慢したのに……」といった自分の都合では全く進みません。

また、周囲の妊娠に「おめでとう」と言うことがとても辛く感じたり、そんな自分に自己嫌悪になったり、帰省にプレッシャーを感じたり。「次こそは!」と期待してもなかなか妊娠に至らないストレスに、心がボロボロになるケースも多くみられます。

パートナーの理解が得られない

働きながらの妊活ストレス3つ目は、「パートナーの理解が得られない」ということです。
パートナーが、月経周期に合わせて夫婦生活を持つことに協力的ではなかったり、通院や治療についてどこか他人事だったりすると、「なんで私ばっかり」とストレスを感じることが多いようです。

体外受精などの高度な治療でも、男性の通院回数は1周期で0~半日で、治療の負担も少なく、女性の思いをそのまま理解することは難しいのかもしれません。そのため、夫婦で妊娠という同じ目標に向かっているはずなのに、大きなストレスを抱えながら孤独に妊活をしている女性が多いように見受けられます。

お金がかかる

体外受精などの高度な不妊治療では、1回あたり約50万円程度の費用がかかり、妊活の大きなストレスになります。2022年4月から不妊治療が保険適用になり、自己負担額は3割になりましたが、それでも決して安いとはいえない金額です。

仕事を続けないと治療費が支払えず、フルタイムで働いていると仕事と妊活の両立が難しいといった、負のスパイラルが起こりやすく、大きなストレスになることがあります。

働く女性は妊活ストレスとどう付き合ったらよい?

就業規則を確認したり、会社との話し合いをする

企業側でも、キャリアと妊活を両立するための制度を作っている会社が増えています。「不妊治療休暇・休職」のような制度を導入していたり、不妊治療目的でも利用できるフレックスタイム制を導入して、出退勤時刻の調整ができる会社もあります。就業規則などで使える制度がないか調べたり、可能なら人事労務の担当者に確認しましょう。

居心地のよい職場で、出産後も働けるイメージがわいているのならば、仕事と治療が両立できる道はないか、勇気を出して会社と話し合うのもいいですね。両立するために、会社の近くの病院を選ぶなど、物理的な対策もとても効果があります。

パートナーと定期的に話し合う、楽しい時間を作る

治療のつらさや不安は、パートナーに自分の気持ちを伝えたり、思いを共感し合えたりすることで解消できることが多いです。パートナーとの信頼関係を作ることは、子どもが生まれた後にも大きく影響します。時間の許す限り、一緒に通院し、「子育ては夫婦2人のもの」という意識を子どもが生まれる前から共有するのもいいでしょう。

また、子どもが生まれると夫婦二人の時間はぐっと減るので、今しかない夫婦2人の時間を思う存分楽しみましょう。

気分転換をする

通院日以外は治療のことを忘れて、いつも通り自分の充実した毎日を送ることをおすすめします。休みの日には夫婦で旅行へ行ったり、気の合う友達と会ったり、心が楽しいと思えることを優先してみて下さい。

「規則正しく健康的な生活でないと妊娠しづらいのでは?」

「カフェインや脂っぽいものは、妊活によくないのでは?」

と思う方もいるかもしれません。けれども、妊娠を望みすぎるあまり、ストレスを感じ生理周期が乱れてしまうということは、よくある話です。

妊活は頑張りすぎないことがポイントです。どうしてもつらいときは、一度治療を休んでリフレッシュしてもいいかもしれません。

高額療養制度・民間の医療保険・自治体独自の補助金・医療費控除を活用する

先にもお伝えした通り、保険適用になったことで治療費の負担はだいぶ軽くなりました。

他にも、治療にかかった費用が一定額を超えた場合には、高額療養費制度が使えることがあります。また、民間の医療保険で不妊治療の費用をまかなえるケースもありますし、一部の自治体では独自の助成金がもらえることもあります。

そして、不妊治療の費用は原則として医療費控除の対象です。体外受精などの高額な治療も対象になります。年間の治療費のうち、保険金・助成金などを除いた金額が10万円を超える場合には、必ず確定申告を行いましょう。

まとめ

「近い将来、結婚して子どもが欲しい」と思っている方がいたら、まずは今の職場でこれから妊娠・出産・子育てをしながら働き続けられるか、想像してみてください。

「子どもが欲しい」と考えたときから、キャリアと子育ての両立は始まっています。キャリアと妊活は、どちらかを諦めなければいけないということではありませんし、両立の方法も人それぞれです。

もし両立に不安を感じたり、産みどきを見つけられず悩んでいたら、不妊治療経験のある専門のキャリアカウンセラーに相談できる場もありますので、利用してみてはいかがでしょうか?

■参考

厚生労働省「不妊治療と仕事の両立サポートハンドブック」

https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/dl/30l.pdf

厚生労働省「不妊治療の保険適用」

https://www.mhlw.go.jp/content/leaflet202212ver2.pdf

厚生労働省「令和2年度 子ども・子育て支援推進調査研究事業 不妊治療の実態に関する調査研究最終報告書」

https://www.mhlw.go.jp/content/000766912.pdf